不動産売買契約の意思能力と行為能力  IZUMAI通信  Vol.188

2022.07.04

不動産売買契約の意思能力と行為能力



今年4月に民法が140年ぶりに改正され、成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
18〜19歳に投票権が与えられる一方で、契約の責任を負わされることになりました。
20歳成人の時は、未成年者と言われた20歳未満の18〜19歳は、契約行為は単独ではできず親の同意が必要でした。
この親の同意なしに契約を単独で行うことができるようになったのです。
金額の小さい、大きいに関係なく、全ての契約行為に責任を持たなければならなくなったので、
当然不動産のような大きな金額の契約も単独で行えるようになったのです



先日お会いした台湾の方は、10代の時に台湾で区分マンションを2部屋購入したと仰っておりました。
海外では珍しくないこのようなことが、今後は日本でも当たり前になってくるのでしょうか?



とは言え、本当に契約するだけの知識、情報を持ち合わせているのか契約の相手側の判断も難しいものがあろうかと思います。
逆にその未熟さに付け込む業者が出てくることも容易に想像つきます。



私自身、18歳の時に
ろくに調べもせず自動車を衝動買いしてしまい、
その後様々な費用の支払いが必要なことを初めて知ることになり、大変苦労した記憶があります。



一方契約の意思能力という点から言うと高齢者の方が深刻な場合が多いと思います。
ある程度の年齢になると、認知症の診断を受けていなくても、高齢者特有の物忘れ、
判断ミスからトラブルになるケースも少なくありません。



契約当初は、何事もなく、契約内容をしっかり理解して契約いただいたにも関わらず、
引渡し前に聞いていない、約束と違うと言い出して揉めることもあったりします。



最終的には、契約書に署名、捺印したということで、契約内容に則って対応するしかありませんが、
お互い気持ち良く取引を完結できないのは気持ちの良いものではありません。



今後契約の当事者が高齢者だというケースが増えてくるでしょうから、極力親族を同席させたり、
場合によっては会話を録音しておく等の対応せざるを得なくなると最近頓に感じます。



高齢者と契約する場合、親族を交えて成年後見人、家族信託などの制度があることを事前に説明しておくべきでしょう。
そのうえで、高齢者ご本人が契約当事者になることを希望されれば、その意向に沿って進めていくしかありませんが、
そのプロセスを記録しておくと後々トラブルを回避できるかもしれません。