相続土地国庫帰属法 IZUMAI通信 Vol.202

2022.10.11

所有者不明土地が日本全国至る所に存在して何とその面積は、九州地方全域の面積より大きくなってしまいました。

 

 

そのため国は、これ以上の増加を止めるべく、いくつかの法律の改正を行いました。
相続登記の義務化もそのうちの一つです。

 

 

今回のテーマに挙げさせていただいた相続土地国庫帰属法も2021年に交付され、2023年の4月までに施行されることが決まってます。

 

 

相続登記のできない所有者不明土地の多くは、これにより国庫に帰属することになるのでしょうか?

 

 

今年ある土地に新築の建物を建てるため、確定測量を行いました。
確定測量は、隣地の所有者に立ち会ってもらい境界をお互い確認して、お互い境界を確認し合った記録として確認書を作成して、それぞれ1通づつ保有します。
そしてその土地を売却した時は、その合意した確認書を新しい所有者に引き継ぐ義務があります。
ですので、全ての隣地の立会いが実現しないと確定測量は完了しません。

 

 

その確定測量において隣地の所有者の所在が分からず大変苦労したケースをご紹介します。

 

 

登記されている所有者が登記の住所を変更せずに転居を繰り返していたために、なかなかご本人の居場所が掴めず、実際に調査を行なっていた土地家屋調査士の方は、船橋、宇都宮、横浜、川崎、、とあちこちの役所に行き、職務権限で戸籍謄本、住民票を取得し、問題の土地の所有者を辿っていったものの結局確認できませんでした。

 

 

この方法で行き詰った土地家屋調査士は、明治時代の土地の所有者を記録した土地基本台帳の所有者から
下っていくという手間のかかる方法で数ヶ月かけて漸く最終住所地を確認できました。

 

 

ただ残念なことに、その方は既に亡くなっておりました。
となると、次は相続人探しです。
これも時間がかかりましたが、相続人のうちの一人の居場所を掴み、お会いすることができました。
その方とお会いしてまた仰天、何と相続人全員が相続放棄しているということが分かり、万事休す、もうどうすることもできませんでした。

 

 

結局、誰も所有していない土地になってしまっていました。
と言うことは、国庫に帰属されたのだと思い、役所に出向いて尋ねてみました。
ところが、役所からは国庫に帰属させるための申請はされたのですか?と聞かれ、困惑。
誰も所有していない土地だから、自動的に国庫に帰属するものと思っていたが、申請が必要とは思いもよりませんでした。

 

 

来年施行される相続土地国庫帰属法は、果たしていかがなものなのか、これが所有者不明土地撲滅の鍵になるのだろうかと、国庫に帰属させるにはどうすればいいか調べてみました。

 

 

国庫に帰属させるには、条件が10項目もありかなりハードルが高いことが分かりました。
実に以下の10項目に該当しないことが条件になり、ひとつでも該当すると国庫に帰属させることができないようです。

 

 

①建物がある土地
②担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている
③通路など他人よって使用されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質に汚染されている土地
⑤所有権があきらでない土地、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖のある土地、通常の管理にあたり過分な費用、労力を要する土地
⑦工作物、樹木、車両などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者と争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理するあたり過分な費用および労力がかかる土地

 

 

この10項目に該当しない土地ということになると、誰でも欲しがるように土地ではないのか、ならば敢えて国庫に帰属させなくても市場で売却できるだろうと調べてみてその効果性に疑問を持ちました。

 

 

また、国庫に帰属させるためには申請が必要であり、法務大臣の承認を取り付けなければなりません。
申請するにも手数料がかかり、法務大臣の承認が得られたら、管理費をまとめて支払わなければなりません。
だいたい80万円程度だということです。

 

 

この内容で果たして所有者不明土地の減少のきっかけが得られると考えているのでしょうか?

 

 

管理に費用も労力もかからない条件の良い土地しか国庫に帰属させることができないとすると、
国庫に帰属した途端、国がその土地を転売して儲けようと考えているのではと思いたくもなる内容です。

 

 

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