アメリカの不動産エージェント IZUMAI通信 Vol.291

2024.07.07

前回のIZUMAI通信で、日本の不動産市場に比べて、アメリカの市場は透明性が非常に高いと書かせていただきました。そのアメリカにおいて、不動産取引全体の9割近くを不動産エージェントが関わっていると言われております。

 

 

アメリカ人は、日本人と違い生涯のうち何回も転居する人が多く、その多くは賃貸でなく売買で住み替えるので、不動産エージェントの役割は非常に大きく、社会的なステータスもとても高くなっております。ですので、アメリカでは如何にして優秀なエージェントと付き合えるかが、自分の人生を豊かにする重要なファクターにもなってくるのです。

 

 

アメリカは訴訟大国ですので、いつどんなことで、誰から訴えられるか分かりません。また日本と違って、訴訟を起こされた場合の請求額が途方もない金額であることが一般的です。故に優秀な弁護士との付き合いが必要です。

 

 

また日本のように国民皆保険の国と違い、誰でも平等に一定水準以上の医療を受けられる訳でなく、自己負担額の大小によって受けられる医療の質に大きな差が生じます。要は、金次第といったところが日本との違いになります。故にかかりつけ医師の存在が、日本より重要視されています。

 

 

この弁護士、医師と並んで、アメリカでは、不動産エージェントとの付き合いがとても大事だと言われており、弁護士、医師と同じくらいの社会的なステータスを与えられているのです。

 

 

一方、日本でも弁護士、医師は、特別視されている職業でありますが、不動産を生業としている人達のことを不動産屋というような見下したような表現で揶揄されることも少なくありません。また、騙されるのではないかとか、怖い人たちが多いのではないかとか、不正を行っているのではないかといった見方をする人も多く、決してアメリカの不動産エージェントのような高い社会的ステータスを得られておりません。

 

 

この差がどこから生じてくるのかというと、前回書かせていただいた通り、日本の不動産市場の透明性の低さ、不動産業者と一般の人との情報量の圧倒的な差が起因しているのだと思います。

 

 

アメリカでは、一般の方が不動産の情報を業者並みに得ることができますし、買主がホームインスペクションと言われる調査を行い、どこにどんな不具合があるか確認してから購入を決めることができます。不具合が見つかった場合は、売主に価格を下げてもらったり、修繕を実施してもらった上で購入することができます。

 

 

日本でも売買の際に、国土交通省がインスペクション(建物状況調査)の実施を推奨しており、宅建業者から売主にインスペクションを行うメリットを説明し実施するかどうか確認することを義務づけています。ですが、日本ではインスペクションの実施率がまったく高まりません。

 

 

これは、何か不具合が見つかった場合、売り辛くなるとか、価格を下げなければならなくなるといった考えが先立つからであると思います。このような考えから日本では中古住宅の流通が進みません。アメリカでは、住宅全体の流通量の約9割弱が中古住宅であることに対して、日本ではほぼ真逆の約85%が新築住宅です。空家が増える背景ともなっており、改善が求められます。

 

 

ただ中古住宅の流通量を増やすと言っても、日本の住宅政策を根本的に変えていく必要があり、不動産ビジネスに関わる業者にのみに期待しても改善は難しいと思います。自省の念も込めてですが、業者側もクライアントの利益を優先する倫理観の醸成がもっと必要があると思います。

 

 

アメリカの不動産エージェントは、不動産取引の成約よりクライアントの利益を最優先に考えますので、倫理意識が高い人が多く、また倫理意識の高さを求められるため、社会的なステータスが高いのだとも言えると思います。

 

 

日本の不動産の市場はアメリカと違う点も多く、現在の市場環境で不動産エージェントがアメリカと同じように高い社会的ステータスを得ていくには容易なことではないかもしれませんが、クライアントのことを最優先に考え、その対応に満足いただければ自ずと評価は高まり、存在感は増し、マーケットも広がっていくものと信じます。

 

 

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