現在の日本では、認知症と診断された高齢者の数は440万人余りとなっております。介護保険の支給を受けている高齢者の47%で、ほぼ半分程度を占めております。2000年に始まった介護保険制度ですが、その時に将来介護保険の要介護、要支援の認定を受ける高齢者の数が500万人を超える時代が来るかもしれないと言われておりましたが、現在690万人を超える介護保険認定者がおり、その半分が認知症というから驚かされます。
当然のことながら、これだけ判断能力が欠如している人が大勢いればトラブルが発生する可能性も多くなるのは必然かと思います。また認知症の高齢者を狙った犯罪を企む輩が増えて来るのも容易に想像できます。本来認知症の高齢者を国民皆んなで見守っていく必要があるにも関わらず、金を奪い取るターゲットとして詐欺行為を働く者が少なくないのは、ほんと嘆かわしいとしか言えません。
新聞で報道されていた事例としては、相場の10倍の価格で不動産を買わせていた不動産会社があったということですが、その手口がまた酷いです。安く仕入れたアパートの1部屋をアパート1棟の価格の10倍の価格で購入させ、転売できないように他の部屋も別の認知症の高齢者に購入させて共有させるという卑劣極まりないやり口で売り上げを挙げていたとうことです。
こんな弱者を食い物にする詐欺行為を平然とで行っている業者が同じ業界に存在しているということは、本当に恥ずかしいです。今後も同じようなことを企む業者が出てこないよう厳罰に処してもらいたいと思います。
では、認知症の高齢者がこのような犯罪に巻き込まれないようどう対処しておいたらいいのでしょうか。
認知症と診断され、判断能力が欠如していると見做される場合に、一般的に検討されるのが後見人制度です。後見人制度には、任意後見人と法定後見人があります。
任意後見制度は、認知症になる前に手続きを取る必要があります。将来的に自分が認知症となって判断能力が欠如した場合に代わりに法律行為を行ってもらえるようになります。ただ任意後見人には家庭裁判所が選任した任意後見監督人をつけなくてはなりません。
任意後見人は、単独で契約の取消などの権利は与えられておりません。任意後見監督人は、家庭裁判所が選定した弁護士等になりますので、親族が任意後見監督人になることができませんし、任意後見制度を利用した場合は、途中で辞めることができません。
当然その間、一定の費用がかかります。
任意後見人に対して法定後見人は、認知症等を患って判断能力が欠如した状態の時につけることができますが、法定後見人も家庭裁判所へ申請して後見人を決めてもらいますので、親族がなれる確率は僅か30%程度しかありません。一般的には、任意後見監督人と同じように弁護士、司法書士がなることが多いようです。法定後見人も途中で契約を打ち切ることができず、生涯費用を支払い続ける必要があります。
この他に信託という制度があります。
この制度も認知症になる前に手続きをしておく必要があります。一旦、認知症になってしまうと資産が凍結され、預貯金の引き出し、不動産の売買などの行為ができなくなります。そうなってしまうと、前述の成年後見人制度を使うしかなくなります。
なるべく早い段階で信託のうちの家族信託という制度について検討しておくことをお薦めします。信託をお願いする人(委託者)が自身の財産のうち何を信託するか決め、信託を受ける人(受託者)に財産の管理・運用をお願いします。信託された財産の管理・運用は、委託者が指定した受益者のためになされます。通常の家族信託では、受益者=委託者となるケースが一般的です。
信託された不動産の名義は、受託者に変更されますが、その不動産から生じる利益は受益者に帰属します。受益者≠委託のケースでは、贈与税の対象となることがあるので注意が必要です。
また信託された財産は、委託者が亡くなった時に家族信託契約で指定した承継人に財産は引き継がれますので、家族信託した財産は遺産分割協議から外れることになります。この機能は、相続税対策として活用するケースもあるようですし、更には、家族信託には、遺言としての機能を持たせることができます。遺言は、一世代までしか相続の指定をすることができませんが、家族信託には受益者連続信託という制度があり、この制度を使うと二世代、三世代と承継させることが可能になります。
だいぶ脱線してしまいましたが、超高齢化社会の日本においては認知症の高齢者の増加は避けることができず、認知症の高齢者が事件に巻き込まれる件数も増加していくことが考えられますので、日本国民全体で高齢者を見守ってあげる世の中にしていく必要がありますね。
次に総理大臣になられる方には、是非ともその辺りの対策も考えて欲しいです。
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